プロセスマイニングとは?RPA導入前後の業務可視化方法

2019年11月12日

RPAとは?

RPA(Robotic Process Automation)は、ロボットにデスクワークの一部を任せ、自動化する技術やサービスの総称です。ロボットと表現されますが、いわゆる機械の『ロボット』がデスクに着席してキーボードやマウスを操作するわけではありません。実際にはあらかじめプログラミングされたソフトウェアがPCのアプリケーションを自動的に実行します。

従来、事務作業の多くは人間がPCのアプリケーションを操作することで実施する「手作業」でした。これら「手作業」のうち、実施のプロセスが明確で反復性のあるもの、いわゆるルーチンワークは、ロボット(ソフトウェア)によって自動化できます。ロボットが人間の代わりにプロセスを自動的に行うことから、ロボティック・プロセス・オートメーションと呼ばれています。

近年の日本企業は人手不足、働き方改革、生産性の向上など、さまざまな課題を抱えています。RPAはこれらの課題を解決できるソリューションとして、ここ数年で大きな注目を集めるようになりました。

RPAを導入するメリットは大きく分けて二つあります。コストの削減と、コア業務への集中です。

RPAによる自動化がもたらすコスト削減

コスト削減は、生産性の向上と言いかえてもよいでしょう。RPAツールのロボットは疲れず、休まず、決められた手順を確実に実行します。

事務作業員が注文書を受け取ったときの作業を例にあげましょう。注文書を受け取った事務作業員はインターネットブラウザを起動し、会計システムに注文書の内容を入力します。注文書の内容を入力し終えたら、次は表計算ソフトウェアの顧客入金管理表を確認し、注文書に書かれた入金予定日を入力します。この作業は事務作業員が予期しないタイミングで、一日に何回も発生します。ただし作業の手順は毎回同じです。

上記の例で注目したいのは「作業が一日に何回も発生する」「作業の手順は毎回同じである」というところです。反復性があり、プロセスが明確なため、RPAツールによって一連の作業を自動化することができます。自動化できるということは、それだけ人件費(コスト)を削減できるということです。

さらに「作業は事務作業員が予期しないタイミングで起きる」という点にも注目しましょう。RPAツールは24時間稼働させることができます。つまり、注文書がいつ届いてもすぐに一連の業務を実行できるのです。注文書の処理、という業務に対して24時間体制で事務作業員を配置する必要がなくなるため、コストの削減に加えて販売機会の拡大も目指すことができます。

RPAによる自動化がもたらすコア業務への集中

「自動化によって人件費が削減できる」と表現すると、しばしば「ロボットが人間の仕事を奪ってしまう」という勘違いを生んでしまいます。ですが実際には違います。RPAによる自動化は「コア業務へ集中できる時間を増やす」というメリットを生むのです。

誰にでもできるような単純な繰り返し作業はロボットにお願いし、人間だからこそすべき、人間だからこそできる業務にリソースを振り分けることができます。「単純な繰り返し作業」であっても人であればミスも発生します。 同じ動作をしているうちに疲労が蓄積されたり、単純すぎてつまらない作業ゆえに集中力が切れたりするからです。 しかしロボットは決められたプログラムを決められたとおりのタイミングで実行するだけです。 何かしらの判断が必要な人だからこそすべき業務は、まだまだ山のようにあるのではないでしょうか?

先ほど例にあげた事務作業員を再び考えてみましょう。事務作業員は、注文書の処理という業務の他にも多数の業務を抱えています。それらの業務の多くは、人間が状況に応じて判断しなければならないものでしょう。顧客との適切なコミュニケーション、ロボットの処理が想定していない例外への対処、さらなる業務効率化の提案など、人間でなければ対応できない業務は山ほどあります。 そしてどれもが重要な業務、すなわちコア業務です。

RPAが得意とするのは人間の判断を必要としない、いわば非コア業務です。誰がやっても同じ業務は、ロボットが代わりにやってくれます。RPAによる自動化は人間を非コア業務から解放し、コア業務へ集中するための時間を増やしてくれるのです。

RPAの導入を成功させるために必要な準備は?

以上のように、RPAの導入によって企業は大きなメリットを見込むことができます。従業員もRPAの導入によって重要な業務にのみ取り組むことができるため、残業の削減やモチベーションの維持といったメリットを得られます。

ですが、RPAはただ単に導入すれば勝手に自動化できる仕事を見つけ、仕事を始められるというわけではありません。RPAを導入するためには入念な準備が必要となります。RPAを導入する前には必ず、ロボット化できる業務を洗い出し、具体的な手順を確認する必要があります。この事前準備が不完全だったり曖昧だったりすると、RPAの導入はうまくいきません。

RPA業務自動分析・導入ソリューションプラットフォーム『D-Analyzer(ディーアナライザー)』の導入を検討するお客様には、「RPA導入の検討を始めたものの、どの業務をRPA化すればよいのかわからない」という方が多くみられます。

RPAを導入する前に、きちんと自社の業務を漏れなく洗い出し、自動化すべき業務と業務改善により効率化が図れる業務にふるい分けることが重要です。
従来は、この棚卸しと選別の作業に専用のコンサルタントが入るケースが一般的でしたが、コストや時間がかかるという課題がありました。 「D-Analyzer」はPCにインストールし、普段通り仕事をするだけで全てのログを漏れなく取得でき、RPAに適切な業務フローを視覚化することができます。たとえコンサルタントに依頼する場合にも、この前段階の情報を自社で用意することができれば、費用を安価に抑えることができますし、コンサルタントの意見や指針もある程度判断もできるようになります。

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RPA導入前のプロセスマイニング

また、RPA化する業務を見つけ出す一手法として、近年は「プロセスマイニング」が注目されています。プロセスマイニングはRPAの導入後にも有用です。

先述したように、RPAを導入する前には必ずロボット化する業務を洗い出す必要があります。この「ロボット化する業務の洗い出し」に用いる手法のひとつがプロセスマイニングです。

プロセスマイニングではまず、従業員が業務に利用しているシステムのイベントのログデータをビッグデータとして蓄積します。次に、蓄積したビッグデータを分析することで処理パターンを抽出します。抽出したデータを基に業務の改善ポイントを明確にする手法です。これにより客観的な裏付けをもとに「ロボット化できる業務」も洗い出すことができるのです。

業務内容を集積したビッグデータからパターン化しているプロセスを掘り出す、という作業を行うため、プロセスマイニングと呼ばれています。

ヒアリングによる業務の洗い出しの限界

従来、ロボット化する業務を洗い出すときには、業務担当者へヒアリングを実施することが一般的でした。ですが、ヒアリングには時間がかかります。深堀するにはヒアリングの技術も必要です。また、ヒアリングによって得られた意見には業務担当者の主観が含まれるため、必ずしも均一的で有用な意見が得られるとは限りません。この方法では、現場の声が大きい部署がRPA化されやすいということにもなりかねません。

客観的な意見を集めることを目的として、先に挙げたように外部コンサルタントにRPA導入を依頼する企業も多いのですが、これも万全ではありません。RPAに精通したコンサルタントも、企業によって異なる各業務の専門家ではないため、意見の深掘りや正しい判断には限界があります。

ヒアリングは、聞く人も聞かれる人も多くの時間を取られますが、その時間に対してあまり大きな成果を見込めないものなのです。

プロセスマイニングとヒアリングを組み合わせる

プロセスマイニングはデータ分析の結果をもとに「ロボット化できる業務」を洗い出すことができます。また、それぞれの業務のうち、特に負担が大きい業務を発見することもできます。

ですが、プロセスマイニングも万能ではありません。データ分析を実施しても、データに含まれないことは見えません。たとえば従業員のストレスやモチベーションの低下などは、システムのイベントログや操作履歴から直接発見することができません。 また、数値上は単調なルーチンワークに見えても、実際には現場の従業員が数値に表れない細かな判断を下している場合もあります。人間の判断を多く必要とする業務は、RPAに向いていません。

たとえば、紙の伝票をもとに帳票システムへ金額を入力する業務は比較的RPA化しやすいと言われています。ですが、もし伝票の書式が統一されていないなら、伝票ごとに必要な情報を人間が判断しなければなりません。伝票に書かれた金額の数値を機械で読み取るためには、どこに金額が書かれているのか明確に定義する必要があります。このような場合はRPAの導入を検討するより、伝票の書式を統一することから始めるべきでしょう。

プロセスマイニングの結果をもとに担当者へヒアリングを行うことで、より確実な業務改善につなげることができるでしょう。データをもとにヒアリングを実施することで、具体的かつ詳細な意見を効率的に得られるようになるでしょう。

RPA導入後のプロセスマイニング

RPA導入後にもプロセスマイニングと同様の分析を行うことで、RPA導入の効果をさまざまな数値から測定することができます。また、RPA導入後に改めてRPA化できる業務を見つけたり、逆にRPAには向いていなかった業務を発見できたりします。

「RPAを導入したものの、どのくらい効果が得られたのか明確にわからない」という声は、多くのRPA導入担当者からあがります。RPAの導入にあたってよく指標にされる値は従業員の労働時間ですが、タイムカードから得られる労働時間の情報だけでは「どの業務が効率化されたのか」「どのくらい効率化されたのか」「他の業務にあてられる時間がどのくらい増えたのか」「費用対効果はどのくらいか」ということまではわかりません。

RPAの導入後、なんの手がかりもなく従業員へヒアリングを実施しても、あまり効果的ではないでしょう。なにも手がかりがないと、従業員それぞれの主観がヒアリング時の回答に大きく影響するためです。一般的に作業が自動化され、業務の負担が軽減されれば担当者はRPAにポジティブな印象を持ちますが、肝心なのは「軽減されたことで何が生まれたか」になります。RPAの導入効果を知るには、これらを俯瞰的な視点でここを把握する必要があるでしょう。

したがって、RPAを導入した後も、プロセスマイニングのような情報の蓄積と分析は必要になります。RPA導入前のデータとRPA導入後のデータを比較することで、どの業務に対してどのくらい効果があったのか、さまざまな面から検討することができます。

また、数値による比較結果を手がかりとしてヒアリングを実施すれば、従業員も客観的に回答しやすくなるでしょう。「数値ではこのように現れているが、実務においては数値に表れない出来事が起きている」といった、データ分析だけではわからないことも見えてきます。

まとめ:RPAとプロセスマイニング

RPAとは、ソフトウェアロボットにデスクワークの一部を任せ、自動化する技術やサービスのことです。言いかえるなら、いわゆるホワイトカラーと呼ばれる職種の人々が担当してきた業務の一部を自動化する技術やサービスです。RPAの導入により、コストの削減や、コア業務への集中といったメリットを期待できます。

一方、RPAの導入には事前の準備が必要です。特に「ロボット化すべき業務の洗い出し」が不完全だったりあいまいだったりすると、RPAを導入しても期待していたほどの効果は得られません。悪くすれば、導入コストだけがかかってしまった、という結末になりかねません。こういった課題を解決する手段として、注目を集めているのがプロセスマイニングです。

プロセスマイニングは、RPAを導入する前に行う「業務可視化」の一手法です。従業員が業務で使用しているシステムのイベントログのデータを蓄積し、分析することで、「パターン化しているプロセス」を発見します。プロセスマイニングを実施することで、客観的な根拠にもとづいたRPAの導入を期待できます。

担当者へヒアリングする手法と比べると、プロセスマイニングは「ロボット化できる業務の洗い出し」を客観的な根拠にもとづいて実現できる、という点で優れています。ですが、プロセスマイニングの結果だけでRPA化する業務を決定するべきではありません。

数値に表れないことは、業務の担当者へヒアリングすることで初めて明らかになるためです。プロセスマイニングによって得られた結果は、担当者へ詳細なヒアリングを実施するための材料である、と考えるべきでしょう。

また、RPAの導入後にもプロセスマイニング同様の分析を行うことで、RPAを導入前と導入後でどのくらい効果があったのか、さまざまな数値を根拠に判断することができます。

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RPAとプロセスマイニングの現在と今後

ここ数年で、RPAは急速に日本企業へ広まりました。例えばNTTデータ社のRPAツール『WinActor®』は2010年に開発され、8年間で1,900社もの企業に導入されました。現在ではRPAツールの日本国内シェアトップを誇ります。

出典:RPAツール『WinActor®』
https://winactor.com/product/WinActor

ガートナージャパン株式会社が2017年5月に調査し、同年10月に公表した結果もご紹介しましょう。日本国内において「RPAを既に導入済み」と回答した企業は全体の14.1%、「導入中/導入予定」と回答した企業は25.4%と、導入に前向きな姿勢を示している企業は4割にものぼります。

出典:ガートナー、RPAに関する調査結果を発表
https://www.gartner.com/jp/newsroom/press-releases/pr-20171012

今後、RPAはいっそう日本企業に広まることでしょう。ですがRPAを導入する前に、RPAに向いている業務とそうでない業務を明確にする必要であり、RPAツールの普及とともにプロセスマイニングのような業務可視化の手段が拡大していくと考えられます。

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