海外と日本のRPA事情比較

2020年3月16日

世界地図と地球儀

日本では2018年ごろから急速に広がりを見せているRPA(Robotic Process Automation)。反復性の高い定型業務、いわゆるルーチンワークを人間のかわりに行ってくれるソリューションとして、さまざまな分野の企業で導入が進んでいます。 また、導入した企業の多くは適用分野を広げたり、複数のRPAツールを比較検討したりと、導入後にも前向きな姿勢が見られます。

日本国内のRPA市場規模も急速に拡大しています。 シンクタンクによって詳細な金額は変わりますが、2016年には数億円から数十億円だったところ、わずか4年後の2020年度には数百億円と桁違いの急成長をとげるであろう、という見通しは共通しています。日本はまさにRPAブームのさなかにあるといっていいでしょう。

さて、現在のようなRPAツールが本格的にビジネスの現場へ投入されるようになったのは2000年代のことです。 当初は主にアメリカで作られていました。日本ではRPAブームが起きていますが、海外の動向はどのようになっているのでしょうか?

ここでは海外のRPA事情について、さまざまな観点から紹介します。
なお、ここでいう海外とは、おおむね欧米諸国を指します。

海外のRPA動向

日本だけでなく、海外においてもRPAの導入は盛んです。 RPAツールやRPA支援サービスを提供する企業は急速に売上を伸ばしており、中には2年間で企業価値が数十倍にはねあがったところもあります。

現代における世界中の企業には複数のコンピューターシステムがあります。 代表的な例だけでも、基幹業務システム、顧客管理システム、人事管理システムなどがあります。 さらに、社員それぞれが持っているパソコンもひとつのシステムです。 複数のシステムが効果的に連動するためには、システムの間でデータを適切にやりとりする必要があります。

ですが、システムとシステムの間におけるデータのやりとりは簡単なことではありません。 そもそも、他のシステムへデータを渡すことを想定していないシステムもあります。 結果的に、異なるシステムの間でデータをやりとりする場合は「仕方なく」人間が手を動かして橋渡しを担当する、という構造になりがちでした。

例えば、基幹業務システムに商品の販売データを入力する必要があるとします。販売データは表形式ですが、販売店ごとにフォーマットが違うとします。 フォーマットを統一できればいいのですが、さまざまな原因によってうまく統一できていません。

こうなると、従業員が適切なデータを目視で確認して、基幹業務システムへ手入力することになります。 多額の人件費がかかりますし、人間は必ずミスをします。さらに、作業そのものは単調なため、従業員のモチベーションも下がりやすくなります。 経営者も、せっかく雇った人材には付加価値の高い仕事に集中することを望むでしょう。ですが、付加価値が低い仕事であっても人間がやらざるをえないため、経営者にとっても従業員にとっても嬉しくない状態が続くことになります。

こうした問題の解決手段として提供されているのがRPAです。人間のかわりにRPAのソフトウェアロボットがルーチンワークをこなします。結果として、人間はより付加価値の高い仕事に集中することができます。

RPAが生まれたのはアメリカです。RPAツール本体やRPA支援サービスの事業には、欧州に本拠地を置く企業も名を連ねています。つまり、日本だけでなく、海外でも同じような問題が起きているのです。

いっぽう、海外ではRPAの導入がスムーズに進みやすく、日本では導入がスムーズに進みにくい、という傾向があるようです。これはいったいなぜなのでしょうか。

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海外企業と日本企業の違いはどこにあるか

ひとことでいうなら、海外と日本とでは企業文化が違います。この違いにより、RPAの導入に対する姿勢や方針も異なります。

海外の企業文化

欧米諸国を本拠地とする海外企業は、トップダウンでRPAを導入するケースが多いようです。 RPAに限らず、業務に使うツールは経営者が決定し、現場は業務内容をツールに合わせる、という傾向にあります。 経営者がツールを決定しているため、おのずと現場の業務も把握しなければなりません。ツールがうまく現場に浸透しなければ、経営が悪化し、経営者が責任を問われることになるためです。

以上のことから、欧米諸国の海外企業においては、RPAの導入に必要不可欠である「業務の標準化」が全社規模で整っている状態が一般的です。RPAを導入するかどうかは、経営者が費用対効果を見ればすぐに決定できます。

このような企業文化が存在する背景は、欧米諸国のなりたちにあります。 例えば、アメリカは多民族国家です。さまざまな生い立ちの人々がいます。したがって、誰でも業務がこなせるよう、理解しやすいマニュアルの作成や、手順の標準化が重視されます。

欧州は、かつては国ごとに違うシステムを使い、それぞれ独自の企業文化を持っていました。 ですが現在の欧州は、違う言葉を話し、文化も異なる人々が活発に行きかう地域となりました。 アメリカと同様に、業務の標準化が求められるようになっています。 また、国ごとに違うシステムを使っていたことから、システムを統合する必要にも迫られています。欧州ではシステムとシステムの間でデータをやりとりする役割を、RPAに任せることが多いようです。

欧米諸国は元々、業務を標準化しなければ立ち行かないという歴史的・文化的な背景を持っており、RPAの一斉導入による全社的な最適化との相性がよかった、という事情があります。

日本の企業文化

日本を本拠地とする企業は、現場が業務で使用するツールを決めるケースがほとんどです。現場による改善努力の結果、業務に合わせてツールを選ぶ、という傾向にあります。 現場が実情に合わせてツールや業務手順を柔軟に変えることができるのはメリットですが、経営者は現場でどのようなツールが使われているのか把握できない、というデメリットもあります。

以上のことから、日本の企業においてはRPAを全社的に導入することは難しいといえるでしょう。 日本企業の文化においては「その人にしかできない」という業務の属人化が進みやすいため、経営者のひと声でいきなりRPAを導入しようとしても、現場の実情に合わないことが多いのです。

日本は島国であり、おおむね共通した価値観を持っており、同じ言葉を話す人々が暮らしています。業務の標準化という手続きがなくても、ある程度業務をこなせる環境にあります。 これらの環境や文化は日本企業の強みでもあるのですが、RPAの一斉導入による全社的な最適化に対しては、相性があまりよくないことが多いのです。

海外企業と日本企業のRPA導入アプローチ

日本では昔から「他に替えのきかない人材」が尊重される文化があります。いっぽう、欧米諸国は「誰にでもできる手順の整備」が尊重される文化があります。文化ですから、良し悪しを比べることはできません。

企業文化が違えば、RPAの導入アプローチも異なります。海外企業の文化を考慮すれば、トップダウンで全社的にRPAを導入するのは自然なことですし、効果的でしょう。

現場の改善努力が文化として存在する日本企業では、現場における小規模なRPAの導入から始め、しだいに横展開していくほうが効果的でしょう。文化が異なる海外企業のRPA導入アプローチを参考にするより、日本の企業文化に適したRPA導入アプローチを考えたほうが生産的です。

もちろん、ここまで述べた企業文化は、あくまで全体的な傾向です。日本でもトップダウンで業務用のツールを決定する企業はすくなくないでしょう。 経営者が現場の業務を把握しているなら、いっきにRPAを導入できる可能性は十分にあると考えられます。

日本のRPA市場に参入を目指す海外ベンダー

海外から日本にRPAが進出するイメージ

海外企業には、ツールをトップダウンで全社的に導入する、業務の標準化を進めることで業務を属人化しない、という文化があります。 そもそもすでにシステム化や自動化が進んでいるため、今後RPA化の必要に迫られる業務が日本に比べるとすくないようです。

いっぽう日本はというと、昔から「他に替えのきかない人材」が尊重される文化があります。これは見方を変えると、業務の属人化に頼ってきた、ということでもあります。 現在の日本では人手不足が深刻になっており、替えのきかない人材だけに頼るわけにはいかなくなっています。人件費も高いため、単純作業のために人を雇うことは難しくなっています。

この状況をRPAベンダー(開発企業)の立場から考えてみましょう。日本の経営者は「人手不足」と「人件費の削減」という、相反する問題に悩んでいます。 優秀な人材は確保したい、けれど余分な人件費は増やしたくない、というのはいささか虫のいい話ではありますが、経営者の本音でもあるでしょう。

また、デスクワークの自動化もあまり進んでおらず、人間がパソコンを操作してルーチンワークを行っている企業も多くあります。 ルーチンワークによって本来取り組むべき業務が圧迫されることについては、現場サイドからも改善したいという声があがっています。

つまり、RPAベンダーにとっては、日本はRPAが他国より多く売れる国である、と映ります。 実際、2020年現在、年商1000億円以上の大企業においては、半数以上がすでにRPAを導入しているという調査結果もあります。

日本国内におけるRPAツールのシェアを見てみましょう。IT専門調査会社IDC Japanの発表によれば、2018年におけるRPAツールのシェアは、1位がNTTデータ、2位がUiPath、3位が富士通です。この3社でシェアの四分の三を占めています。 続いて、Automation Anywhere、Blue Prismがシェアの上位に入ります。

注目したいのは、上位5企業のうち、3社が海外を本拠地に置くRPAベンダーである、というところです。製品サイトを見てみると、ていねいな日本語化がなされています。また、Automation Anywhereは日立ソリューションズとパートナー契約を結んでいます。 Blue Prismは東芝情報システムと販売代理店契約を結んでいます。それぞれ、日本の大手 SIer と連携することで日本におけるシェア拡大を狙っているようです。

シェア2位のUiPathにいたっては、UiPath日本法人を2017年に設立しました。同社が日本のRPA市場を重視し、積極的に投資をしていることがわかります。

海外で進むプロセスマイニングの普及

最後に、海外におけるRPA事情の今後についてもすこし触れます。すでに欧米諸国ではRPAがかなり普及しており、さらなる効率化を目指したソリューションが模索されています。

中でも注目されているのが、欧州で普及が始まっているプロセスマイニングです。システムやアプリケーションがどのように動作したのか、操作されたのか、といったデータを自動的に集め、分析することで、業務フローを可視化します。無駄な業務やボトルネックとなっている業務をビッグデータ分析によって発見することで、効果的な改善をはかります。

プロセスマイニングによって可視化された業務フローは、RPAのソフトウェアロボット作成にも役立ちます。 可視化の結果、パターン化していると判断できた業務をソフトウェアロボットに任せれば、効率的な自動化を期待できます。

日本ではプロセスマイニングはあまり浸透していませんが、今後の動向に注目しておきたいソリューションです。

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まとめ:海外と日本のRPA事情比較

ここでは海外のRPA事情について、さまざまな観点から紹介しました。海外においてもRPAの導入は盛んです。 RPAツールやRPA支援サービスを提供する企業は急速に売上を伸ばしています。日本でも海外でも、デスクワークにおける定型業務を自動化したいというニーズは大きいようです。

海外ではRPAの導入がスムーズに進みやすく、日本では導入がスムーズに進みにくい、という傾向があるようです。これは海外と日本の企業文化が違うことが主な原因です。 海外のやりかたを真似するのではなく、日本企業の文化にそった導入アプローチを取ることで、スムーズな導入を期待できるでしょう。

また、RPAツールのベンダーという観点からも海外の事情を紹介しました。日本はRPAのシェア拡大を狙える大きな市場ととらえられているようです。 日本企業と提携したり、日本法人を設立したりと、日本市場を重視する動きが見られます。

最後に、海外におけるRPA事情の今後についても少し触れました。欧米諸国ではさらなる効率化を目指したソリューションが模索されています。 中でも、ビッグデータをもとに業務の流れを可視化する「プロセスマイニング」が注目を集めています。 RPA導入における最大の難題といってよい「業務フローの可視化」を自動化できるという点でも、プロセスマイニングに期待が寄せられています。