RPA と AI 、そして人間が作る仕事の未来

2020年2月21日

RPAやAIで作る未来の仕事のイメージ

最近、世間の耳目を集めている RPA や AI。「RPA ってなに?」「AI ってなに?」と聞かれたとき、あなたは的確に説明できるでしょうか? 「自社でも活用したい」という話が持ち上がったとき、具体的な活用のイメージを持つことができるでしょうか?

なにかの技術やサービスがトレンドになっているとしても、それらの本質を理解し、どのように活用できるのかを知っておくことが重要です。本質を理解せず、活用のビジョンも具体的に描けないようでは、いざ上司から導入の指示がでたときに「何からすればよいかわからない」という状態になってしまいます。
まずは両社の言葉の意味について解説します。

RPA は Robotic Process Automation の略称です。デスクワークをソフトウェアに任せ、自動化する技術やサービスの総称です。 RPA を適切に運用できれば人件費の削減や業務の効率化に大きなインパクトをもたらすため、2018年ごろから日本でも注目を集めるようになりました。

AI は Artificial Intelligence の略称です。日本語では人工知能と訳します。 2020年現在においてはおおむね、ディープラーニング(Deep Learning)を含む機械学習という技術や、機械学習を応用したサービスを指し示します。 ソフトウェアが自動的に学習することで、人間のように高度で複雑な判断ができます。

RPA も AI も、人間の代わりに高度で複雑な業務を実施する、という点においては共通しているように思えます。ですがRPA と AI は本質的に異なります。ここでは RPA と AI の本質、それぞれの違い、そして RPA と AI の組み合わせによる業務効率化の未来を解説します。

RPA とは

RPA をざっくりと説明するならば、次のように表現できます。

ソフトウェアロボットと呼ばれる「業務の手順を記録したもの」が、パソコンを自動的に操作することで、人間の代わりにデスクワークを実施する。

もう少し詳しく説明しましょう。まず、自動化したい業務の内容を、論理的な言葉で表現できるように整理します。 次に、整理した業務内容を RPA ツールに記録します。 RPA ツールは記録された手順にしたがってパソコンを自動的に操作し、人間の代わりに業務を行います。

RPA のソフトウェアロボットは記録された内容の通りに動作します。人間と違ってミスをしません。電源を確保していれば24時間働き続けます。的確な自動化が実現できれば、自動化したぶんだけ人件費を削減できます。

RPA は、パソコンの中で動く産業用ロボットのようなものです。産業用ロボットが工場の生産ラインで休みなく製品を組み立て続けるように、ソフトウェアロボットはパソコンの中で休みなくパソコンを操作し続けます。 工場の生産ラインが大量の製品を自動的に生み出すことで利益をあげるように、RPA ツールも大量の仕事を自動化することで人件費をより効果的に削減できます。

具体例をあげましょう。営業担当者が提案資料を作成する、という業務は RPA 化できる可能性が高い業務です。 見積書など、フォーマットが決まっている資料であれば、ソフトウェアロボットに作らせることで作業時間を短縮できます。 営業担当者は本来の仕事である営業活動に専念しやすくなります。

一方、 RPA のソフトウェアロボットは「記録されていない内容」には対応できません。 だいたいの場合、記録されていない内容とは、人間の判断が必要となる作業です。 さきほどあげた営業担当者の例でいえば「お客様ごとに対応を変える」という作業は、ソフトウェアロボットでは対応できません。 お客様の事情に沿った特例を設ける、といったことは、営業担当者やプロジェクトの責任者が判断することです。

RPA を活用することで得られるメリットは、人件費の削減や、従来の業務を効率化することだけではありません。 もちろん人件費の削減や業務の効率化は重要な課題ですし、 RPA がもたらす大きなメリットです。ですが、RPA がもたらす本質的なメリットは、人間が本当に注力するべきコア業務により多くのリソースを投入できるようになる、ということです。

RPA による目先の効率化だけでなく、その先にあるコア業務への注力も含めることで、精度よく RPA の導入効果を見積もることができるでしょう。

AI とは

AI をざっくりと説明するならば、次のように表現できます。

人間と同じくらい高度で複雑な判断を下せるソフトウェア。

RPA と違い、とても抽象的であいまいです。これには理由があります。

AI 事情に詳しい技術者へ「AI の実体はなにか」と尋ねると、十人十色の答えが返ってくることでしょう。 ある人は「ディープラーニングを言い換えたものだ」と答えるでしょうし、ある人は「それが AI のように見えるなら、それは AI だ」と答えるかもしれません。 人によっては「そんなものはまだ実現していない」と答えるかもしれません。つまり、人によって AI の定義は異なるのです。

他の側面も見てみましょう。30年前は、ファジィ理論を応用したファジィ制御という技術が「人工知能(=AI)」と呼ばれていました。 洗濯機やエアコン、炊飯器といった家電にもファジィ制御プログラムが組み込まれていました。 ですが、2020年現在においてファジィ制御を「AI」と呼ぶ人はいないでしょう。AI は、時代によっても定義が変わる言葉なのです。

AI は、いわゆる「バズワード」です。「Python というプログラミング言語で書かれたものは機械学習と呼ばれ、 PowerPoint®︎ で書かれたものは AI と呼ばれる」というジョークもあります。 高度で複雑なことを実行できるソフトウェアであれば、なんでも「AI」と呼んでいいことになります。

ただし、現代の「AI と呼ばれる技術」が30年前の「AI と呼ばれていた技術」とは比べものにならないほど高性能になっていることも、また事実です。 具体的には、特定の用途に限れば人間より AI のほうが優れた能力を発揮します。

何百枚もの画像の中から「人の顔が写った画像だけを選ぶ」という仕事をさせるなら、ソフトウェアのほうが人間より素早く、正確に、仕事をこなします。 他にも、 Google 傘下の Deep Mind 社が開発した Alpha Go というソフトウェアが囲碁の世界チャンピオンに勝ち越したニュースは世界中の技術者を驚かせました。

AI という言葉にまどわされないコツがあります。

  • その「AI」は具体的になにをするのか
  • その「AI」が仕事をするために必要なデータはなにか
  • その「AI」はどのような判断ミスをする可能性があるか

これらのポイントを押さえておけば、いわゆる「AI」があらゆる問題を解決できる万能薬であると思いこんでしまうことはないでしょう。

上記のポイントをよく検討していなかったために発生した事故があります。 誰も意図的に女性差別をしたかったわけではないのに、結果として AI による女性差別がなされてしまった、という事故です。

Amazon は、採用時の書類審査にあたって自社開発の AI を利用していました。人間では膨大な枚数の履歴書をチェックしきれなかったためです。 ですが、過去の採用データを学習した Amazon の AI は「女性」という単語を含む履歴書の評価を下げてしまったのです。 過去に女性の採用が少なかったため、 AI は「女性という単語が含まれる履歴書は採用の可能性が低い」と判断してしまいました。

このような事故が起きた原因は2つあります。ひとつは、 AI が仕事をするために与えられたデータが偏っていたことです。不完全なデータを与えられた AI は不完全な判断しかできません。また、 AI がどのような判断ミスをする可能性があるか十分に検討されていなかった、という点も原因のひとつです。 AI は自分の判断が正しいかどうか判断できません。 AI の判断が正しいかどうかは、人間が改めて判断しなければならないのです。

RPA と AI の違い

RPAロボットがAIで動作するイメージ

RPA は「事前に記録した手順に従って、人間の代わりに作業を行う」ソリューションです。いっぽう、現代の AI は「膨大なデータを学習し、人間の代わりに判断を行う」ソリューションです。RPA と AI のもっとも大きな違いは「作業」をするのか「判断」をするのか、という点です。

RPA は、いわば現場のツールです。人間の代わりにパソコンを操作して、実務を肩代わりします。 事前に記録されたことしか実行しませんが、確実に、素早く、休みなく業務をこなしてくれます。 人間の判断と組み合わせることで、ツールと人間との間で仕事のバトンリレーをつなぐことができます。

AI は、いわば会議のツールです。人間の代わりに膨大なデータから重要なことをピックアップして、判断を下します。 現代のコンピュータは膨大なデータを現実的な時間で処理できますし、判断の精度を向上させる技術が日々開発されています。 人間の仕事は、 AI に任せる仕事の内容を決め、よりよいデータを整備し、 AI の判断が適切かどうかを見きわめることです。

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RPA と AI を組み合わせる

RPA と AI の違いが見えると、お互いに補いあえる部分も見えてきます。最後に、 RPA と AI がお互いに補いあうことで、いっそう業務が効率化される未来を考えてみましょう。

これまで述べてきたように、 RPA ツールで作成したソフトウェアロボットはあいまいな判断ができません。あいまいな判断が必要なプロセスは、人間へ任せる必要があります。 営業担当者の「お客様によって適切な対応を行う」という判断、あるいは経理担当者の「伝票の特記事項を適切に処理する」という判断は、ソフトウェアロボットにはできないことです。

ここで、上記のようなあいまいな判断さえも AI に任せられるなら、いっそうの効率化を見込むことができます。適切な判断を下せる AI を作成できれば、RPA と AI を組み合わせることで、より多くの仕事を自動化できる、という未来が見えてきます。現在の AI の性能を考えれば、そう遠くない未来に RPA と AI を組み合わせた自動化の実践例が多く見られるようになるでしょう。

もちろん、最初のうちは AI が「人間の判断がどのように下されたのか」ということを学習する必要があります。また、 AI が正しく学習できているかどうか人間がチェックする必要もあります。

では、将来的に人間の仕事はなくなってしまうのでしょうか?19世期に産業革命が起きたとき、多くの仕事が機械にとってかわられ、仕事を追われた人々がいるように、 RPA や AI は人間から仕事を奪ってしまうのでしょうか?

おそらくそんなことはありません。どれほど技術が発達しても、社会の課題が尽きることはありません。 それらの課題を発見し、解決しなければならない、と考えるのは、あいかわらず人間の仕事です。19世紀の産業革命によって、たしかに多くの人々がいっとき仕事を失いました。 ですが、機械を作る・修理する、という新しい仕事が生まれました。産業革命によって社会は大きく変化しましたが、変化に適応した人は新しい仕事を獲得したわけです。

RPA も AI も、高度で複雑なことができるようになっていますが、あくまで人間の仕事をサポートする「ツール」です。ツールは責任を負うことができません。 責任を負うことができるのは、現在のところ人間の特権なのです。

もっと低い目線で見ても、人間の仕事は無くならないといえます。 RPA や AI は、コンピュータの中で動くソフトウェアです。 手を動かしてソフトウェアロボットや AI を作るのは人間です。足を伸ばして人と会い、コミュニケーションを取るのも、やはり人間の仕事です。ソフトウェア、あるいはデータから見れば非効率なことであっても、人間にとっては重要なこと、という事柄はいくらでもあります。

まとめ:RPA と AI 、そして人間が作る仕事の未来

ここでは RPA と AI の本質、それぞれの違い、そして RPA と AI の組み合わせによる業務効率化の未来を解説しました。

RPA は、人間の代わりにデスクワークを自動的に行ってくれるソリューションです。ただし、業務の手順をあらかじめ設定する必要がありますし、業務の手順を設定するためには業務の内容を論理的に整理する必要があります。

また、設定した内容に含まれていないことは実行できません。特に、人間の判断が必要になる作業があるなら、いったん人間へ仕事のバトンを預ける必要があります。

AI は、人間の代わりに複雑で高度な判断を下せるソリューションです。ただし、 AI になにをさせるのか、どのようなデータを AI に学習させるのか、 AI がどのような判断ミスをする可能性があるのか、ということは人間が判断しなければなりません。

RPA と AI の違いは「作業をするのが RPA 、判断をするのが AI」と端的に表現できます。RPA がデスクワークという作業を担い、 RPA が判断できないことを AI が判断する、という組み合わせによって、将来的には業務の効率化がいっそう進むことでしょう。

とはいえ、いくら効率化が進んだとしても、幸か不幸か人間の仕事は無くなりません。 RPA や AI にどのような仕事をさせるのか決めるのは、人間が決めることです。また、 RPA も AI も、あくまでツール(道具)です。道具をどう使うのか、道具を使った責任をどのように負うのか、ということもまた、人間が担当すべき仕事なのです。

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