RPAとはなにか?導入の流れとポイントを徹底解説!

2020年2月20日

RPAテクノロジーのイメージ

最近、RPA(アールピーエー)という言葉をよく耳にします。
RPAは業務効率化や生産性向上に貢献するテクノロジーのひとつとして2016年頃から注目を集め、すでに多くの企業が導入をしています。
また、中には実際に大きな導入効果を出している事例も出てきており、新聞やニュースサイトなどでも「○○会社がRPAを導入して年間〇万時間の削減に成功!」といった実績を見かけるようになりました。
RPAの仕組みについて、あまり詳しくは知らないという方も、なんとなくRPAが仕事を自動化してくれる便利なツールであるというイメージはあるかと思います。

本記事はRPAとは何かという基本から、導入する手順や重要なポイントについて、話題のRPAについて詳しく知りたい方、実際に導入を検討しているけど何をすれば良いかわからないという方に向けて、徹底解説します。

RPAとは?

RPAはRobotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略で、PCで行う定型業務をソフトウェアロボットにより、自動化するテクロノジーのことです。
もちろんロボットといっても人型の物理的なロボットが仕事を代行するというわけではなく、ソフトウェアプログラムで作られた仮想的なロボットが自動的にPC内部の処理を行うものです。
プログラムが自動処理することを擬人化して、デジタルレイバー(仮想知的労働者)とも呼ばれます。

仮想知的労働者と聞くと、何でも自動でできるすごいテクノロジーだと期待してしまいますが、RPAは導入するだけで勝手に自動化できる仕事を見つけて、業務を始めてくれるというものではありません。過度な期待は禁物です。
業務を自動化するには、あらかじめ人が自動化したい業務を選定し、業務フローと実行する処理をRPAに覚えさせる必要があります。この作業をRPAの「シナリオ作成」と呼びます。
そして後に詳しく解説しますが、自動化する上で人が行わなくてはならない最初のステップである「業務の選定」がRPA導入の肝となり、同時に多くの導入担当者を悩ませる鬼門になります。

業務効率化につながるRPA

皆さんも1日のオフィスワークの中で、様々な定型業務を行っているかと思います。
例えばあるシステム画面に表示された数値を、Microsoft Excel®などの表計算ソフトの管理表にコピー&ペーストで転記したり、メールソフトで受信した内容を別システムに入力したりと、業務パターンは多岐に渡るでしょう。
特に事務職など、バックオフィス系の業務担当者であれば、伝票整理、記帳、請求書作成といった定型業務が多くの比重を占めているので、RPAの活躍がイメージしやすいはずです。

中には書類作成などの定型業務に1日中追われていて、本来やるべき仕事にあまり時間が割けず、残業が増えてしまっているケースもあるでしょう。
もし仮に皆さんの1日の業務の中で、RPAで自動化できる定型業務が1日30分程度だったとしても、それが365日ノンストップで稼働して、且つ会社全体の規模で考えたら大きな業務効率化につながります。 業務効率化とは「ムリ、ムダ、ムラ」の3つをなくして、より効率的に業務を遂行する取り組みのことです。
RPAによる業務の自動化はこういった「ムリ、ムダ、ムラ」の排除につながり、結果として業務効率化や生産性の向上に寄与するものとして期待されているテクノロジーなのです。
RPAを導入したら、可能な限り多くの業務の自動化を推進してRPAの導入効果を最大化すべきでしょう。

業務効率化を実現した女性

RPAとマクロって何が違う?

RPAは定型処理を自動化してくれるテクノロジーということで、よくマクロとよく比較されます。
マクロとは複雑なコンピューターの操作を自動化する技術の総称で、Microsoft Excel®のように、多くのMicrosoft® Officeに実装されています。 あらかじめプログラムを組めば、ボタン一つで希望の処理を自動で実行してくれるものですが、両者は具体的に何が違うのでしょうか。
両者の違いをまとめると以下の表になります。

RPAとマクロの違いを比較した表

RPAもマクロも一連の業務プロセスを自動化してくれるという点で違いはありませんが、大きく違うのは汎用性になります。
マクロは前述のように主にMicrosoft🄬 Officeの中で用いられている機能であるため、連携できるのは基本的にOffice製品になり、自動化できる範囲も同様です。 いっぽうでRPAはほぼすべてのアプリケーションに対応できるため、Office製品に関わらず、複数のアプリケーションに跨った処理も実行することができます。また処理できるデータ量や処理のスピードに関してもRPAの方が優れています。

さらに、マクロはVBA(Microsoft Visual Basic for Applications)というプログラミング言語を使用し、開発されています。 より複雑な処理を自動化したいとなるとプログラミング言語を利用する必要があるため、まったく経験がない人には多少とっつきづらさがあるかもしれません。 その点において、RPAは開発言語を使うことなくシナリオを作成することができるので、必ずしもプログラミングの技術者でなくても操作・管理することができるのも大きな特長でしょう。

ここまで両者を比較した結果、RPAが圧倒的に優れているように感じますが、導入コストの面では、使用できる製品が限定的であるものの、マクロに軍配が上がります。
現在すでに多くの定型業務をマクロで自動化できていて、今後アプリケーションを拡大する見通しが立っていない場合には、RPAを新たに導入するのではなく、 コストを掛けずにマクロを使い続けたほうが投資対効果の面では良いということになります。

なぜ今RPAが必要とされているか

作業効率を上げる」「ルーティンワークを自動化する」という考え方は、ビジネスの世界では昔からあったように思えますが、現在、RPAはなぜここまで注目されることになったのでしょうか。
その背景には、現在の日本の社会問題があります。
具体的には「労働人口の減少」と「労働生産性の低迷」の2つが挙げられます。

労働人口の減少

以下の図は、総務省が発表している日本の人口の推移です。

日本の人口推移のグラフ

出典:総務省 平成29年版情報通信白書

グラフを見ると人口が減少していくのとともに、黄色い折れ線グラフが示す高齢化率が上昇していくことがわかります。日本は2007年の時点で超高齢化社会に突入しており、以降も高齢化のスピードは加速しています。
では、少ない労働人口で多くの高齢者を支える必要がある社会の中で、労働者には何が求められるのでしょうか。 もちろん「人がいない分、頑張って長時間働く!」ということではありません。
カギとなるのは一人当たりの労働生産性の向上です。
働く人一人ひとりが効率よく仕事をし、現在より少ない労働時間でより多くの価値を生み出せば、労働者が足りない分をカバーできるというわけです。

労働生産性の低迷

それでは次に現状の日本の労働生産性(GDP)を見てみましょう。

主要先進7カ国の国民1人当たりのGDPの順位変遷

出典:労働生産性の国際比較 2019(公益財団法人 日本生産性本部)

このグラフは先進国7か国の国民一人あたりの労働生産性の推移を表したものですが、残念なことに多くの先進国と比べて、日本のGDPは低いことがわかります。日本の中で働いているとこういった事実には気づきにくいので、実感がない方も多いかもしれません。 労働人口が減り、生産性の向上が求められる状況にも関わらず、低迷してしまっている日本は、危機的な状況であるといえるかもしれません。

日本の政府もこの社会問題を深刻な問題として受け止め、重要政策のひとつとして、「働き方改革」の推進を掲げているわけです。

政府は「働き方改革」を通して、労働生産性を向上させるとともに、企業の従業員満足度を上げ、離職率を低下し、 多様な働き方を許容する(ダイバーシティ)ことで、労働人口の減少をカバーしようとする狙いがあります。

こういった課題を背景に、日本全体で業務効率化の必要性が高まり、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things/モノのインターネット)などとともに注目を浴びているテクノロジーがRPAなのです。

RPA導入のメリットとデメリット

さて、日本の社会問題を受けて期待と注目の的となっているRPAですが、実際に導入するとどのようなメリットを享受することができるのでしょうか。 また逆にデメリットには何があるのでしょうか。順番にご紹介します。

RPA導入のメリット

RPAのメリットは、以下の4つが挙げられます。

・主に人件費などのコスト削減
RPAを導入することで業務が自動化され、定型業務の多くは人が行う必要がなくなります。導入前と比較し全体の労働時間は減り、結果として人件費が削減されることにつながります。

・コア業務への注力
労働時間が削減できるということは、その分他の業務を行う時間が創出されていることになります。 例えば営業職の人が、書類作成に多くの時間を割いてしまっていた場合、RPAで書類作成を自動化すれば、本来注力すべき営業活動に専念でき、より売上向上に貢献できます。
誰でもできるような定型作業はRPAに任せて、人はクリエイティブで付加価値の高い仕事に比重をシフトさせるということがRPAのメリットを最大化するポイントになります。

・24時間365日の稼働
RPAは人と違い、就業時間や所定労働時間というものがありません。
人のように疲労が溜まることもなく、24時間365日稼働することできます。
このため人が働くことを前提に立てられた業務計画と比較すると、RPAの働きによって大幅な時間短縮になるでしょう。

・リスクマネジメント
RPAはインプットされたシナリオに従い、正確に業務を遂行することができます。人のようにうっかりミスをしてしまうということもありません。 RPAの導入により安定した業務の遂行ができ、人が作業をすると起こり得るような「数を間違えて発注してしまった」、 「送り先を間違えて情報を漏洩させてしまった」といったヒューマンエラーの回避につながり、結果的に売り上げダウンやセキュリティのリスク回避に繋がります。

RPA導入のデメリット

RPAのデメリットイメージ

魅力的な導入メリットがあるRPAですが、一方でデメリットも存在します。デメリットは以下の4つがあります。

・システムエラーやサーバーダウンによる業務停止
システムであるが故に不具合が発生しないとは言い切れません。また構築環境にもよりますが、RPAを導入しているサーバーが負荷に耐え切れずダウンしてしまった場合には、任せている業務自体が停止してしまうことになります。
他のシステムやツールを導入したときと同じように、導入後の運用、管理体制も重要なポイントになってきます。

・情報漏洩のリスク
これもRPAに限ったことではありませんが、ネットワークにつながった環境を使用する場合、不正アクセスや悪意のあるコンピューターウイルスに感染するリスクがあります。 これらの被害に合うと企業の大切な情報を漏洩するリスクにつながります。
RPAの導入に際しては、セキュリティ対策を万全にしておかなくてはいけません。

・野良ロボットの乱立
野良ロボットとは、管理者がいない、もしくは不明となっているRPAのソフトウェアロボットのことを言います。
誰がなんの目的で作成したか、さらにはどんな処理をしているのかさえも把握できていない野良ロボットが稼働を続けることは、先に挙げたセキュリティリスクにも直結します。 また業務手順の変更などがあった場合にも、更新が漏れてしまい、古い手順のまま間違った処理を続けることになりかねません。
誰もが操作できるRPAである反面、きちんと管理されていないと簡単に野良ロボットが生まれてしまいます。

・間違った処理に気づかない
RPAはあらかじめインプットされたことを条件に従って、延々と繰り返します。これはメリットでも挙げた内容ですが、裏を返せばデメリットにもなり得ます。
もし最初のシナリオ作成の時点で内容にミスがあり、それに気づかずロボットを稼働させてしまった場合、間違った処理を延々に繰り返してしまうのです。 現状のRPA技術の多くはRPA自身で処理の問題や間違いに気付くことができません。

ここまでRPAのメリットとデメリットを紹介してきました。両者は表裏一体で、正しく運用していないと、せっかくのメリットもデメリットになりかねません。
デメリットで挙げたリスクを100%防ぐことは困難かもしれませんが、あらかじめ対策しておくことで、トラブルが発生した場合の被害を最小限に食い止めることができます。RPA導入後の運用や管理体制もきちんと整備してから導入することが大切でしょう。

RPA市場の変遷

次にRPA市場の動向を見てみましょう。

拡大するRPA市場

RPAとOCRの市場規模予測のグラフ

ITR「ITR Market View:RPA/OCR/BPM市場2018」

上の図はIT関連の調査会社であるITR社が2018年の10月に発表したRPAとOCR(Optical Character Recognition/光学的文字認識)の市場規模の推移です。 OCRは手書きの文字や印刷された情報を読み取り、電子化する技術ですが、RPAと親和性が高いため、連携して導入する企業が増えているようです。RPA市場は年々規模の拡大を続け、ITR社の調査によると2022年度には400億円に達すると予測されています。

背景にあるのはRPA関連サービスの成長

さらにRPA市場の推移を詳しく見てみましょう。

RPAとOCRの市場規模予測のグラフ

出典:矢野経済研究所「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)市場規模推移・予測」

上の図は、矢野経済研究所が発表したRPA市場の予測になります。
グラフではRPA市場を「RPA関連サービス」と「RPAツール製品」とに分け、推移を表しています。

このグラフから、RPA市場の拡大の背景として、RPAツール以上に関連サービスの伸長が影響していることがわかります。

ここでいうRPA関連サービスは、「RPA診断サービス」、「RPA導入支援サービス」、「RPA業務プロセス自動化サービス」、 「RPA活用業務プロセス改善コンサルティング」、「RPA運用保守サービス」など、支援サービス全般が対象です。

このように支援サービスが伸びるということから、今後周辺技術との連携などでRPAの実現できることが増えるということと、 最大活用するにはツール導入だけでは完結せず、支援サービスの利用が必要不可欠になっていくということが考えられます。

一方でRPAはすでに幻滅期という見方も

各社の調査レポートでRPA市場は拡大していくという予測が発表されていますが、一方でRPAはすでに幻滅期に入っているという見方もあります。
幻滅期という表現は、リサーチ会社であるガートナー社が提唱している「ハイプ・サイクル」の中に出てきます。ハイプ・サイクルはテクノロジーやアプリケーションが時間の経過の中でどのように市場に対して浸透・進化していくかを視覚的に表したもので、 <黎明期>、<「過度な期待の」ピーク期>、<幻滅期>、<啓蒙活動期>、<生産性の安定期>の5つのフェーズで表現しています。

ハイプ・サイクル

出典:ガートナー社「ハイプ・サイクル」
https://www.gartner.com/jp/research/methodologies/gartner-hype-cycle

ハイプ・サイクルにおける幻滅期は、ピーク期に抱かれた過度な期待状態から、実際の導入が進む中で、思うような成果が見られず、関心が薄れる時期とされています。この時期にあるサービスは、ユーザーの満足が得られるように再編していくことが求められます。

日本のテクノロジーのハイプ・サイクル

出展:ガートナー社「日本におけるテクノロジーのハイプ・サイクル:2019年」
https://www.gartner.com/jp/newsroom/press-releases/pr-20191031

上図は、2019年10月にガートナー社が発表した、日本におけるテクロノジーのハイプ・サイクルです。 ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)をはじめ、人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)が幻滅期に突入していることがわかるでしょう。

ただ幻滅期に突入したからといって、単純に衰退していくということではありません。幻滅期はどんなサービスも避けては通れないフェーズであり、 市場に浸透するために淘汰され、より適切な形でユーザーに根付いていく動きだとガートナー社は説明しています。

RPAとAIの役割の違い

RPAと同様、昨今注目が集まっているテクノロジーにAIがあります。
AIは「Artificial Intelligence」の略で、日本語では「人工知能」です。
AIも多くの人がその名称は耳にしたことがあるかと思いますが、中にはRPAとAIをそれぞれ正しく理解しておらず、頭の中で混同してしまっている人もいるかもしれません。両者は違うものですが、どのような違いがあるのでしょうか。
RPAとAIはそれぞれ以下のように説明できます。

  • RPA:PC業務を自動処理するソフトウェア
  • AI:人間のような知能を持ち、データに基づき、判断ができるソフトウェア

両者の関係を例えると、ルールに従って実際に動かす「手」がRPA、物事を判断し、ルールを作ることができる「頭脳」がAIです。
更にいえば、ロボットがRPAでAIがパイロット(操縦士)といった感じでしょうか。

現状の多くのRPAロボットは、人間が事前に細かく条件やルールを指示する必要があり、指示された内容以上に動くことができません。 しかしAIというパイロットを乗せることで、人がいなくてもAIが判断し、RPAをコントロールすることができるようになるわけです。

RPAとAIは役割とできることは異なりますが、とても相性の良いテクロノジーといえます。

RPAはAIで進化する

先に述べたように、RPAはAIと相性が良いので、お互いが連携することで進化することが期待できます。そしてこの動きはすでに始まっています。

RPAの進化は「クラス」という表現で3つのフェーズに分けて、考えられています。

RPAのクラス

出典:総務省「RPAのクラス」
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02tsushin02_04000043.html

クラス1のRPAでは、人がルールを定めた定型業務の自動化に留まりますが、AIを搭載することでクラス2となり、一部の非定型業務に関しても、言語解析や画像解析をすることで自ら判断して自動化ができるようになります。
さらに搭載したAIのレベルが向上することで、クラス3へと進み、より高度な自律化が実現できます。

ここまでくると人に代わって実施できる範囲も拡大し、私たちの働き方が大きく様変わりすることが期待できます。

RPAとAIを組み合わせたものとして、IPA(Intelligent Process Automation)という呼び方もされています。

RPAの導入方法(導入の流れ)

RPA導入のイメージ

ここまでRPAの概要、話題となっている背景について説明してきました。ここからは実際にRPAを導入する場合のポイントや注意事項についてご紹介していきます。
RPAの導入は具体的にどのような手順で進めていけば良いのでしょうか。
全体の大まかな流れは以下になります。

  • ① 導入検討/検証フェーズ
  •  ↓
  • ② 導入フェーズ
  •  ↓
  • ③ 運用フェーズ

ここでは最も重要になる導入検討/検証フェーズで実施することについて、解説します。

導入検討/検証フェーズで行うこと

はじめに、RPAを導入すべきかを検討し、実際に導入した場合にどういったことが実現できそうかを検証します。

このフェーズがRPAの導入プロセスにおいて、もっとも肝となる部分です。
「導入したけど思ったより効果がでなかった」、「トラブルが発生して余計に工数が掛かっている」、「そもそも効果が出ているのかわからない」といった、 今実際に起きている失敗事例の多くはこのフェーズをきちんと行わなかったことが要因であると考えられます。

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このフェーズで実施すべき内容は以下になります。

(1)課題の把握/業務の棚卸し

導入検討段階では、まず自社の課題を把握することが大切です。
生産性を向上させるうえで、ボトルネックになっている箇所は具体的にどこか、そしてなぜボトルネックになっているのか。
これらを正しく把握するにははじめに業務の棚卸しが必要になります。
現場の業務をしっかり洗い出すことで、属人化している業務や無駄な作業が見えてきます。
属人化した業務はそのままにせず、可能であれば業務手順書を作成し、誰がやっても同じことができる状態に整理することがポイントです。

ここでは、「プロセスマイニング」や「タスクマイニング」という手法を用いて業務の分析を行うことができます。
両者を簡単に説明すると以下のようになります。

プロセスマイニング システムのイベントログを解析し、業務プロセスの可視化、課題となっている箇所を抽出する。業務分析のマクロのアプローチ手法。
タスクマイニング 個々のパソコンの操作ログを解析し、プロセスマイニングで抽出した課題の具体的な要因を特定する。業務分析のミクロのアプローチ手法。

プロセスマイニングでは複数人に跨って行われる業務なども俯瞰的に捉えることができます。逆に各個人のすべての操作内容を網羅的に捉えることはできないので、タスクマイニングが役立つというわけです。

ただそれぞれの言葉の意味がわかっても、実際にどのように行えばよいのかまったくイメージがわかないかと思います。
最近はRPAの導入支援サービスを行っている会社も多数あるので、導入検討から専門のコンサルタントに依頼することもできます。もしくは、プロセスマイニングやタスクマイニングのツールを導入して、ある程度はまず自社で洗い出すという方法もオススメです。

なお、RPA専門のコンサルタントに依頼する場合には、RPAの導入や使用するRPAツールが前提にならないようにすることがポイントです。
業務効率化の手段は様々で、状況によってはRPAの導入が必ずしも有効であるとは限らないし、RPAのツールにもいくつか種類があるからです。

(2)業務選定

RPAの導入によって自社の課題解決につながり、一定の効果が期待できることがわかったら、次にRPA化の対象業務を選定します。
まずはじめは効果が出やすい事務系の部署に絞るなど、スモールスタートで始めるのがオススメです。RPAには得意不得意がありますので、対象業務にはRPAと親和性が高い業務を選びます。
具体的には以下のような業務が良いとされています。

  • 手順が複雑でなく、一定のルールに従い繰り返される業務
  • 手順やルールが頻繁に変わらない業務
  • 繁閑の差が激しい業務

業務の途中で人の判断が必要となるものや、状況によって手順が変わりやすい業務、パソコンの操作で完結しない業務はRPAには適しません。

業務を選定するための方法に、「実際の現場担当者に詳細なヒアリングを行う」というのがあります。ただしヒアリングには注意が必要です。
ヒアリングは往々にして、誰が誰に聞くかで結果が大きく変わることがあるからです。導入事例の中には、「現場の声の大きい人の業務だけが対象になり、本来自動化すべき業務の多くが後回しになった」という声もあります。

では、どのようにして均一的に業務を選定することができるのでしょうか。
ここで「業務自動分析ツール」が活躍します。
業務自動分析ツールは、対象者のパソコンにインストールし、普段通り業務を行うだけで、すべての操作ログを取得し、どの業務にどれだけ時間をつかっているかを可視化することができます。
中でもD-Analyzer(ディーアナライザー)は、業務フローをチャート化して、同時にRPA化すべき対象業務を抽出することに特化したツールです。
無料のトライアルもあるので、まずは試してみても良いでしょう。

業務自動分析ツールD-Analyzer公式サイト
https://www.tepss.com/danalyzer/

「RPAツールの前に別のツールを導入する」と聞くと手間や工数がかかりそうとネガティブなイメージが浮かびそうですが、先にもありました通り「均一的に業務を選定する」ことがRPA導入には需要で、そのために業務自動分析ツールは必須と言えます。

(3)RPAツールの選定

自社の課題やRPA化すべき業務の選定できたら、RPAツールの選定に移ります。
RPAベンダーは増えてきていますが、国内で代表的なRPAツールは、「WinActor®︎(ウィンアクター)」、「UiPath®︎(ユーアイパス)」、「Bizrobo!®︎(ビズロボ)」の3つです。

それぞれの特長は以下です。

  • WinActor®
  • 国内シェアトップのRPAツールです。純国産なので、管理画面も操作しやすく、スムーズなロボット開発が行えます。デスクトップ単位で導入ができ、サポートも豊富です。
  • UiPath®︎
  • 米UiPath社が開発したRPAツールで、世界で高いシェアを占めています。完全日本語化しており、国内でも導入を伸ばしています。
    Microsoft社の製品など、相性の良いシステムが豊富なのが特長です。
  • Bizrobo!®︎
  • 様々なサービス形態、ライセンス形態を展開しているため、スモールスタートから大規模まで様々なシーンで導入できるツールです。

トライアルで利用できるツールもあるので、必ず比較をして、自社の導入環境や課題にマッチするツールを選定することがポイントです。
なお、ツールの購入には以下の3パターンがあります。

  • RPAツールのメーカーから購入
  • 販売代理店から購入
  • RPA導入支援企業から購入

導入するツールが決まったのであれば、直接メーカーから購入することができますが、複数ツールから比較検討を行う場合には、販売代理店やライセンスを取り扱っている導入支援企業から購入するのが良いでしょう。

(4)PoC(Proof of Concept)

PoCは日本語で「概念検証」というもので、実際にRPAツールでプロトタイプの試作ロボットを開発し、稼働させてみることで費用対効果の見通しや、課題解決につながるかを検証します。
本番稼働をしてから「思っていたのと違った」など、導入後のギャップを埋めるために必ず実施すべき内容です。
ここで対象のソフトウェアとRPAツールとの相性も見ておく必要があります。

(5)運用体制の構築

導入したら終わりではないのがRPAです。導入の前段階で、運用の見通しを立てておくことが大切です。
RPA導入後は、以下の人材が必要になります。

・責任者(推進担当)
基本的にはRPA導入時の主担当になりますが、導入後も効果検証やガバナンスの構築、運用拡大などRPAを推進していく動きが必要です。 導入支援サービスに依頼している場合には支援企業との窓口となり、自社の業務を俯瞰的に把握できている人材が好ましいです。

・RPAエンジニア
導入したRPAで実際にロボット設計、シナリオ作成を行う担当者です。
必ずしもプログラミングに精通した技術者である必要はありませんが、設計時の考え方やシステム操作など、技術者であればよりスムーズな運用ができるでしょう。自社にリソースやスキルが不足している場合、導入支援企業からエンジニアを派遣してもらったり、教育担当者を派遣してもらい、自社担当者にOJTを行っていく方法もあります。
導入後のトラブル発生時にも迅速に対応に当たることができる体制構築が必要です。

・サポート
運用中に社内から来る、問い合わせや要望、トラブルに対応する窓口の担当者です。
スモールスタートで始めた場合など、RPAエンジニアの部隊で兼任するという方法もありますが、導入部署の業務を詳しく把握できている人材が窓口であると対応もスムーズになります。

豊富なRPA導入支援サービス

ここまでRPAの導入プロセスをご紹介してきましたが、やはり最初からすべてを自社内で行うのは困難でしょう。実際にRPAを導入して、効果出している事例の多くも何らかの導入支援サービスを活用しています。
ここでは、参考までにRPAの導入支援サービスを行っている会社の一部をご紹介します。

RPA導入支援サービス4選

・株式会社テンダ
https://www.tenda.co.jp/solution/rpa/
先にご紹介したD-Analyzerをはじめ、RPAの導入支援ツールを開発、販売するテンダは、ツールの販売だけでなく、ワンストップの導入支援サービスも提供しています。
導入検討からRPAエンジニアの派遣、さらには運用サポートなどRPA導入におけるプロセスを網羅しています。
自社開発の導入支援ツールを活用することで、網羅的な業務の可視化など、従来のコンサルタントの弱点を補うことができるのが特長です。

RPA導入支援ツール「D-Analyzer」の業務プロセス可視化画面

RPA導入支援ツール「D-Analyzer」の業務プロセス可視化画面

・パーソルグループ
https://www.persol-pt.co.jp/persolrpa/
労働者派遣事業で有名なパーソルグループ3社のRPA部門を集結させ、ワンストップの導入支援サービス「パーソルのRPA」を立ち上げています。独自のカリキュラムによる研修が豊富にあることが魅力です。
各種RPAツールのライセンス販売も行います。

・ヒューマンリソシア株式会社
https://resocia.jp/corporate/solution/rpa/
「リソシアRPA」はWinActor®︎のRPAの人材教育、サポートに力を入れたサービスです。「教育」をバックボーンに人材事業を展開してきた同社だからこそ提供できるサービスメニューが特長です。

・株式会社ビッグツリーテクノロジー&コンサルティング
https://rpa.bigtreetc.com/
RPAの主要6製品を取り扱うマルチツールベンダーです。幅広いツールの中から最適なRPA製品を選定することができ、導入コンサルティングやPoC、ロボット設計、運用保守までトータルで対応します。

ここでご紹介した企業はごく一部になります。
RPA導入支援サービスを展開している企業は多数ありますので、各サービスの特長から一番自社に合ったものを選ぶと良いでしょう。

まとめ

本記事では、RPAの概要から話題となっている社会的背景、さらには導入プロセスについて紹介しました。
働き方改革へのアプローチは様々ですが、RPAによる業務自動化への期待値は高く、今後もAIなどの関連技術との連携で、更なる業務改善に貢献することが想像できます。

特に今回重点的にお話した、導入ステップにおける「業務の棚卸し」や「課題の把握」に関しては、結果としてRPAを導入しなかったとしても、業務効率化につながる重要なプロセスとなるでしょう。

今RPAの導入を検討されている方は「RPAの導入」をゴールとせず、真に改善すべき課題がどこにあるのか、目的をどこに置くか、正しく見定め必要があります。
そのためにもまずは業務自動分析ツールなどを活用しながら、自社の見える化を図ることが第一歩です。

また、確実に自動化が浸透しそうな部署に絞って、まずはスモールスタートでRPA化を始めてみるというのも、RPA導入を成功に導くポイントとなるはずです。
ただしスモールスタートで始めた場合には、導入後の効果検証やフィードバックが特に重要であることも忘れてはいけません。

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