RPAの導入に必要不可欠な「業務の可視化」とは?

2020年1月28日

業務可視化のイメージ

2017年ごろから、日本でもRPAの導入を検討する企業が続々と増えてきました。 RPA(Robotic Process Automation)とは、パソコンの操作をソフトウェアで自動化するソリューションです。 RPAを導入することでさまざまな業務を自動化できるため、うまく導入できれば時間的・人的リソースを大幅に削減することができます。

ですが、RPA導入のプロジェクト担当者は「どういった業務がRPA化できるのかわからない」「RPAの費用対効果を経営陣に示しにくい」などといった悩みを抱えています。また、多くの企業がRPAを導入しても「期待していたほど効果があがらない」と感じているようです。

RPA導入プロジェクトの担当者が抱える悩み

RPA導入のプロジェクト担当者は、しばしば次のような悩みを抱えることになります。

  • RPAに置きかえる業務の洗い出しかたがわからない
  • どういった業務がRPA化できるのかわからない
  • ヒアリングに長い時間がかかってしまう
  • RPAの費用対効果が見えにくい

それぞれの悩みについて、詳しく掘り下げましょう。

RPAに置きかえる業務の洗い出しかたがわからない

RPAに置きかえる業務を洗い出すのは、RPAの導入にあたって必要不可欠です。どのような業務をRPA化するのか、という見通しが立たないことには、RPA化を進めることはできません。

RPAはしばしば「定型業務に向く」と言われます。実際、その通りなのですが、人間にとっての「定型業務」と、ソフトウェアロボットにとっての「定型業務」は、しばしば食い違います。人間にとっては同じことの繰り返しに思えても、ソフトウェアロボットにとっては同じことの繰り返しではない、というわけです。

ですが、RPAに置きかえる業務を洗い出すためには、RPAに関する知識と、該当業務に対する理解の、両方が必要です。 もちろん、それぞれの部署から人員を集め、RPA導入プロジェクトのタスクフォースチームを設立することも考えられます。

ですが、普段の業務も並行して行うことになるため、負担が大きくなってしまいます。 RPAを導入することで従業員の負担を軽減するはずが、RPAを導入するために従業員の負担が増大する、という本末転倒なことになりかねません。

また、洗い出した業務がどのような作業フローになっているのか可視化する必要もあります。複雑な作業フローを可視化する作業は大変ですし、見落としによる抜け漏れが発生することも考えられます。

どういった業務がRPA化できるのかわからない

RPAには得意な業務と不得意な業務があります。ごく簡単に表現すると、RPAは「同じことの繰り返し」になっている業務が得意です。 ですが、人間にとっては「同じことの繰り返し」に思える業務も、RPAにとっては「同じことの繰り返しではない」業務だった、ということがよくあります。

例をあげましょう。各部署から集めた帳票データを会計システムへ入力しなおす、という業務があるとします。業務担当者にとっては「同じことの繰り返し」に違いありません。 ですが、帳票データの形式が各部署によって違う場合、RPAにとっては「同じことの繰り返しではない」業務になります。同じ表計算ソフトウェアを使っていても、参照する行と列がひとつ違うだけで、RPAにとってはまったく違う作業になってしまうのです。

RPAは、人間と違って「融通」がききません。そのかわり、適切に仕事を与えれば、桁違いの速度と正確さで業務をこなしてくれます。 ようするに、使いどころを誤らなければいいわけです。RPA化できる業務を事前に正しく判断することは、とても重要なことです。

RPA化できるかどうかの判断の手がかりは、やはり業務内容の可視化です。可視化した業務内容のうち、自動化できるところはRPAに任せ、人間の判断が必要なところは人間に任せればよいのです。 さきほどの例でいえば、帳票データの形式が部署によって違うことが課題である、ということが業務の可視化によって簡単に明らかになります。 すべての部署で帳票データの形式を統一するか、参照するデータの位置を部署ごとに設定する、という対策を講じることができるようになります。

ヒアリングに長い時間がかかってしまう

RPAが稼働するのは、実務の現場です。現場の業務担当者が一番詳しいのですから、現場の業務担当者へヒアリングを行うことは必須です。

ですが、ヒアリングにはコストがかかります。業務担当者は本来の業務とは別に時間を作らなければなりませんし、ヒアリングを行うプロジェクト担当者もヒアリング結果を分析しなければなりません。

また、なんの材料もなしにヒアリングを行うと、業務担当者の主観だけが手がかりになってしまいます。 業務担当者は、実際にはRPA化が難しい業務を「RPA化できる」と主張したり、逆に本来はRPA化すべき業務を「RPA化できない」と主張したりしてしまいます。 担当者に悪意がなくとも、このような認識のズレは起こりうることです。

さらに、ヒアリングをする側は業務に関して詳しくないため、業務担当者の意見を信じるしかなくなります。 結果として、RPAに適さない業務を無理やりRPA化してしまい、期待していたほどの効果があがらない、といったことになってしまいます。

あらかじめ業務を可視化しておくと、ヒアリングの材料になります。業務担当者は可視化された業務内容をもとに客観的な意見を述べられるようになりますし、数値に表れていない業務内容について言及できるようにもなります。 ヒアリングを行う側も、業務担当者の意見が妥当かどうか判断する手がかりを得られます。

RPAの費用対効果が見えにくい

現在のところ、RPAの利用には比較的高額なライセンス費が必要です。RPAをうまく活用できれば費用対効果はプラスになりますが、そうでなければマイナスになります。 ここでプロジェクトの担当者を悩ませるのが「費用対効果の見通しをどのように経営陣へ示せばいいか」ということです。

現在の業務にどれくらいの人件費がかかっているか、RPA化によってどれくらい人件費を削減できるのか、といった見積もりを出すことは、簡単ではありません。 具体的かつ客観的な数値にもとづいて見積もりを示さないと、経営陣はRPAの導入に対して及び腰になってしまいます。

あらかじめ業務を可視化することで、現在の業務にどれくらいの人件費がかかっているか、RPA化によってどの業務がどのくらい効率化できるのか、ということを明確に示せるようになります。

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RPAを導入しても効果があがらない理由

導入後に効果が上がらず悩む男性

ここまで、RPAを導入する前の課題について解説しました。

ここからはRPAを導入した後の課題についても解説します。

多くの企業が、RPAを導入しても「期待していたほど効果があがらない」と感じています。このように感じてしまう原因はシンプルです。RPAを導入しさえすれば、業務が自動化され、従業員は時間を効率的に使うことができる、という誤った認識が広まっているためです。

実際には、RPAには適した業務と適していない業務があります。適した業務をRPA化すれば、文字通り桁違いの効率化が見こめます。いっぽう、適していない業務をRPA化しようとしてもうまくいきません。 RPAに適さない業務をむりやり自動化した結果、かえって従業員の負担が増えてしまった、というケースさえあります。

RPAは、確かに業務を自動化し、効率を改善してくれます。ですが、本当にRPAの導入で業務を効率化したいなら、事前の準備が必要不可欠です。 具体的には、正確で漏れのない「業務の可視化」を事前に行わないと、RPAを導入しても効果は薄くなります。

また、RPA導入前後でどのような変化が起きたのか測定するためにも、業務の可視化は必要不可欠です。

業務プロセスを可視化

RPAのコンサルタントが介入した場合、業務フローの明確化が難題であるといわれています。 多くの場合、ひとかたまりと見なされる業務でも、作業フローは複雑に分岐しているためです。また、誰が作業するかによって手法が異なることもよくあります。 複雑で、人によって手法も異なる作業内容から、隠れたパターンを目視で発見するのは至難の業です。

そこで、株式会社テンダが提供するRPAの導入支援ツールのRPA支援ツール「D-Analyzer(ディーアナライザー)」では、RPAの導入にあたって必須となる「業務の可視化」や「RPA化する業務の洗い出し」を自動的に行ってくれます。 従業員は普段通りに業務でパソコンを使用するだけ。業務に支障はありません。

さらに 、ビッグデータから掘り起こした「パターン化している業務」の内容を、フローチャートで可視化します。 業務内容をフローチャートによって可視化することで、それぞれの作業にどのくらい時間がかかっているのか、どの作業がボトルネックになっているのか、といったことが直感的に把握できるようになります。

RPAのメンテナンスを効率化

あまり知られていないことですが、RPAを導入したあとには「メンテナンスをどうするか」という課題もあります。

RPAに設定された自動化の内容は「ソフトウェアロボット」と呼ばれます。ソフトウェアロボットは設定された手順の通りにパソコンを操作しますが、設定されていない手順を実行することはできません。

RPA化した業務の内容が変わる、ということは普通に起こりうることです。 このとき、RPAの設定をした業務担当者が異動や退職によって不在になっていたなら、RPAの設定内容を知っている人がいない、ということになります。 RPAの設定をした業務担当者が、当時の設定内容を完璧に覚えているという保証もありません。

もっと悪いケースも考えられます。ソフトウェアロボットの存在そのものが忘れられ、誰も知らないところで黙々とソフトウェアロボットが動き続けている、というケースです。 ソフトウェアロボットが再発見されたとしても、なにをやっているのかわかりません。 重要な業務をこなしている様子があるなら、内容を検証してソフトウェアロボットを作り直す必要があります。

以上のように、RPAを導入し、ソフトウェアロボットを作ったなら、継続的にメンテナンスを行う必要があるのです。

メンテナンスを効率化するために、対象業務やソフトウェアロボットに設定した内容については文書化することがおすすめです。 マニュアル作成ソフトの「Dojo(ドージョー)」では、パソコンの操作内容を自動で記憶し、文書として出力することができます。

これにより、現在のソフトウェアロボットがどのような業務を行っているのか把握できるようになります。 そして、業務内容が変わった場合でも、マニュアルを残しておくことで誰でもメンテナンスを行えるようになります。

まとめ:RPA導入の前後に必要不可欠な「業務の可視化」

ここではRPA導入の前後における課題と、その解決法について解説しました。RPA導入の前後における課題には、共通して「業務の可視化が不十分である」という原因があります。

RPA導入の検討段階では、どの業務をRPA化すべきか、という課題があります。業務内容をすばやく可視化できたなら、RPA化すべき業務を洗い出すことも容易になります。

RPA導入後にはRPAの効果をどのように測定するか、RPAで作成したソフトウェアロボットをどのようにメンテナンスするか、という課題があります。 これらの課題も、RPA化した業務の内容を可視化しておくことでスムーズに解決できるようになります。

そしてRPAの導入によって削減できた時間を、従業員がどのような業務にあてているか、ということも可視化できます。RPAによる業務の自動化がもたらすメリットは、人件費の削減だけではありません。RPAがもたらすメリットの本質は、人間が本来やるべき仕事に集中できるようになる、ということなのです。

とはいえ、業務の可視化をすべて人手で実施しようとすると、大変な手間がかかります。手間がかかるということは、それだけ人件費がかかるということです。 人件費を削減するためにRPAを導入しようというのに、導入のために大きな人件費がかかってしまっては本末転倒です。

記事内でもご紹介させて頂きましたがD-Analyzerでは、「どのようなアプリケーションが」「どのような順番で」「どれくらいの時間使われているか」といった操作履歴をすべて記録します。 次に、蓄積したビッグデータの中から「パターン化している業務」を自動的に分析・抽出します。

さらに、ビッグデータから掘り起こした「パターン化している業務」の内容を、フローチャートで可視化します。 業務内容をフローチャートによって可視化することで、それぞれの作業にどのくらい時間がかかっているのか、どの作業がボトルネックになっているのか、といったことが直感的に把握できるようになります。

RPA効果の最大化につなげるためにも、D-Analyzerなどを活用するなどして、スムーズかつスマートにRPAを導入・運用しましょう。

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